ニュースの概要
日本テレビ系の番組で、新宿の屋上に定着したニホンミツバチの猛暑対策が取り上げられた。推定6,000匹の群れを守るため、飼育者らは屋上に打ち水をし、水飲み場も整えた。巣箱は夏仕様に改修し、天井と低い位置に網を設けて、下から冷たい空気を入れ、上から熱い空気を逃がす造りにした。巣箱の中で新しい蜂が生まれているか、群れの勢いはどうかも確かめたところ、群れは約16,500匹にまで増えていたという。コンクリートに囲まれた都市の屋上は、周りの環境や気温の影響を受けやすい。そうした場所で小さな生き物の暮らしをどう支えるかが、この取り組みの焦点である。
引用元: 新宿DASH、猛暑から屋上のミツバチを守る対策を紹介(ORICON NEWS)
分析・見解
屋上の暑さは、巣箱の中の「子育て温度」を脅かす
ミツバチは、幼虫やさなぎのいる場所をおよそ35度前後に保って暮らしているとされる。外が暑くなりすぎると、働き蜂は羽を震わせて風を送り、水を運んで巣に塗り、水が蒸発するときの冷却(=気化熱)で温度を下げようとする。ただし、これは群れにとって大きな負担である。
ビルの屋上は、日差しと照り返しで地面より過酷になりやすい。コンクリートに熱がたまり、夜になっても冷えにくい。今回の新宿の例が興味深いのは、群れの努力に任せず、人間の側が環境を整えた点にある。
網を二か所に設けた巣箱は、煙突のように空気を動かす
改修の要点は、天井と低い位置の二か所に網を設けたことだ。下から冷たい空気を入れ、上から熱い空気を出す。暖かい空気は軽くて上へ昇るため、入口を低く、出口を高くすれば、風がなくても空気が自然に流れる。家の「煙突効果」と同じ仕組みである。
大事なのは、新しい機械を使っていないことだ。網と配置の工夫だけで換気をつくっている。ただし、換気を良くしすぎると冬の保温や湿度に響くため、季節ごとに開け閉めできる設計が望ましい。外敵の侵入を防ぐ工夫との両立も欠かせない。
6,000匹から16,500匹へ。数字が示すのは「定着」の質
推定6,000匹だった群れが約16,500匹まで増えたという数字は、巣の中で産卵と羽化がきちんと回っている証拠と読める。働き蜂の寿命は数週間と短く、新しい蜂が生まれ続けなければ群れは縮む。増えたこと自体が、暑さ対策が子育てを守れた結果だと考えられる。
ただし、これは一つの巣箱の経過である。他の屋上で同じ結果になるとは限らない。周りに花がどれだけあるか、水場が近いかで、結果は大きく変わる。数字を過信せず、条件の違いとあわせて見る必要がある。
都市養蜂の本当の課題は、蜜の量より暑さと花の確保
東京・銀座の屋上養蜂のように、都心でのはちみつづくりには二十年近い歴史がある。話題性が先行しがちだが、本質は都市の緑と生き物のつながりを保つことだ。気温が年々上がる中、夏の暑さは群れの生死に関わる。街路樹や公園の花が夏にどれだけ咲くかも、餌の量を左右する。
今後は、屋上緑化や打ち水、日除けなどの暑さ対策を、ビル全体の環境づくりと組み合わせる動きが広がるだろう。ミツバチは、街の暑さと緑の状態を映す、分かりやすい指標にもなる。
ビジネスへの影響
屋上を持つ企業が、はじめに確認したい三つの点
自社ビルや商業施設の屋上で養蜂を考えるなら、まず安全と管理の体制を確認したい。第一に、屋上の夏の温度と日陰の有無。第二に、水場の確保と、近隣への配慮である。蜂の飛来について、周辺の住民やテナントに事前に説明しておく必要がある。第三に、担当者の体制だ。
巣箱は置いて終わりではなく、定期的な点検が要る。外部の養蜂家と契約するか、社内で育てるかを最初に決めておくと、夏の対応が遅れにくい。
暑さ対策の記録を、取り組みの価値として伝える
打ち水や巣箱の改修、群れの数の変化を、写真と数字で公開すれば、はちみつの販売だけよりも信頼されやすい。社員研修や、地域の子ども向けの見学とも結びつけやすい。
ただし、「生物多様性に貢献」と大きく言うのは慎重にしたい。ミツバチを増やしすぎると、野生の蜂と花を取り合うとの指摘もある。実際の効果を測り、控えめに伝える姿勢が、長い目で評価につながる。
費用を抑え、小さく始めて判断する
網付きの巣箱への改修は、大きな設備投資ではない。まず一群から始め、夏の温度と群れの数を記録し、翌年に増やすか決めるやり方が堅実である。事故や撤去に備えた保険と取り決めも、契約書に入れておきたい。