ニュースの概要
毎日新聞によると、第32回日韓国際環境賞に、東京・銀座のビル屋上で養蜂を続ける銀座ミツバチプロジェクトと、韓国・済州島で海女として働く李兪静さんが選ばれた。一方は日本の中心的な繁華街で、もう一方は玄武岩の海岸が続く離島で、ともに自然と暮らしを近い距離で結び、地域の営みとして環境保全を進めてきた。大がかりな開発ではなく、日々の作業の積み重ねが評価された形である。都市と漁村という対照的な現場が同時に光を当てられた点に、この賞の今年の特徴がある。本稿では、二つの受賞が示す環境活動の変化を読み解き、都市養蜂を考える事業者にとっての実務上のヒントを整理する。
引用元: 第32回 日韓国際環境賞 銀座ミツバチプロジェクト/済州島の海女・李兪静さん(毎日新聞)
分析・見解
屋上の養蜂と海女漁に共通する、小さな営みの強さ
銀座ミツバチプロジェクトは2006年に始まった。ビルの屋上に巣箱を置き、採れた蜜を街の菓子店や飲食店が使う。済州島の海女は、息を止めて海に潜り、貝や海藻を一つずつ手で採る漁を受け継いできた。規模も道具も違う。それでも、自然に負担をかけすぎない小さな営みである点は同じだ。大きな設備投資や最新機器に頼らず、人の手と観察眼で資源を守る。この地味な強さが、審査で評価されたと考えられる。
都心の緑が蜜源になるという意外な事実
銀座のミツバチは、街路樹や公園、皇居周辺の花を求めて飛ぶ。ミツバチの行動範囲は巣箱から2〜3キロほどとされる。つまり、街の緑の質がそのまま蜜の量と味に表れる。蜂は街の緑の健康診断役でもあるわけだ。蜜の重さだけでなく、周辺にどれだけ花の咲く環境が残っているかを映す点が、都市養蜂の隠れた価値である。環境活動を数字で語りにくいという悩みは多いが、養蜂は収穫量という分かりやすい指標を持つ。ここが、他の環境活動にない強みになる。
海女漁は資源管理の手本でもある
海女漁では、潜る時間、漁をする季節、採ってよい貝の大きさを、共同体の約束事として決めてきた。獲りすぎないことで資源を残す知恵であり、現代の持続可能な漁業の考え方と重なる。済州の海女文化は2016年にユネスコの無形文化遺産に登録された。しかし、担い手の高齢化は深刻である。さらに、海水温の上昇で海藻が減る磯焼けが進み、守るだけでは追いつかない場面も増えている。伝統を残すには、技の継承と海そのものの再生を並行して進める必要がある。
日韓を結ぶ賞が投げかける問い
海を挟んだ二つの国で、都市と漁村という正反対の現場が同時に評価された。環境保全は専門家や大企業だけのものではなく、暮らしの延長にあるという合図だと読める。今後は、蜜源となる花の植栽と沿岸の藻場再生を組み合わせた市民活動など、陸と海をつなぐ取り組みが広がる可能性がある。小さな主体が国境を越えて経験を交換する動きは、行政の施策だけでは届かない層に環境意識を届ける役割を果たすだろう。
ビジネスへの影響
屋上や遊休地を、地域との接点に変える
銀座の事例が示すのは、養蜂そのものより、人が集まる仕組みの価値である。巣箱の管理に地元の店や住民が関わり、収穫した蜜が商品や贈答品として街に戻る。この循環が、取引先や従業員との会話の種になる。自社ビルの屋上、工場の敷地、駐車場の隅などは、小さな試験導入の場所になりうる。まず1〜2群から始め、巣箱の見学や蜜の試食を地域向けの催しに組み込むと、費用以上の広報効果を得やすい。
環境活動を続けるための採算と安全の設計
続けるには、法令と安全の確認が欠かせない。ミツバチの飼育は都道府県への届出が必要で、近隣への説明や、蜂が水を求めて飛ぶ場所の確保も重要になる。蜜を販売する場合は、食品衛生の基準に沿った採取と容器詰めの手順が求められる。採算面では、蜜の売上だけで回収するのは難しい。広報費、従業員研修、取引先との共同企画など、複数の予算から少しずつ支える設計にすると長続きする。収穫量や周辺の開花状況を毎年記録し、取り組みの成果を数字で説明できるようにしておくことも、社内の理解を保つ近道である。